Tシャツにレーパンという、野々村輝チックの懐かしい風貌な彼は、スポーツ車に乗るのが初めての男。
コゼバッグを入手し、そこから自転車に興味を持つ。
そんな男がこんなアングラ工房でオーダーし、納車して数か月。
男性諸君のワンダーランドに勤務する彼は、自転車乗りの体になるために勤務後に夜な夜な自転車を転がしている。
最近の夏休みでは京都まで踏んでいったらしい。
旅からがっつり日焼けし帰ってくれば、普段使いできるSPDシューズが欲しい、とうちに相談に来た。
当然うちには取扱いが無いので、こういう時に便利な近所のブルーラグへ一緒に行く。
日常で履いてもシャレオツで気軽に扱えるDZRを購入、こんな時を見据えて片面SPDペダルにしておいたのが早くも生きた。
そんな自転車生活をはじめてきてる奴は、もうすでに立派なサイクリストでしょう。
オーダー車は玄人だけのモノというわけではありません。
彼がそんな一例です。
初心者だろうが、百戦錬磨のマニアだろうが、要望に応じて作るということに変わりはない。
細部の作りこみに対する心境も変化はない。
初心者の方は漠然とした要望なので、自転車に浸かりゆく未来をこちらがしっかり見据えて噛み砕いてあげればそれで良し。
とりあえず彼の大事な愛車を作ることができ、非常に良い気分になれました。
20年ほど前の中坊の夏休み、東京湾から新潟の日本海まで踏んだのを思い出します。
ロードマンのパチモノみたいな自転車を入手して、少々ダサい自転車だったのかもしれないけど、当時の自分には超高級車に見えた最高のマシン。
そんな愛車を駆り、乗り始めの慣れない身体でヒーヒー言いながらの旅。
それまではいわばママチャリしか乗ったことがなく、距離も数kmが最長なぐらいのよくある自転車生活。
当然身体も知識も全く出来上がっておらず、たしかパンク修理キットやライトも持たず、無謀な旅に出向いた懐かしい記憶が甦ります。
いつになっても、行く先々を共にする愛車って奴は、最高だ。
そんな相棒を作らせていただく仕事に就けて光栄な限りです。