工房立ち上げて少し経ってから自作で作り上げた冶具。
とある冶具に大いなる敬意と感銘を受け製作したモノ。
当工房最初期の2~3台は冶具無しでビルドしていました。
ある程度以上技術ある職人ならば冶具が無くても同じ精度で作れると思うが、冶具無し製作はかなり作業性が悪かったのは鮮明に記憶に残っている。
多少の機材は必要だが、冶具はないと作れないということではないし、整った良い機材でないと作れないというのも寂しい。
どんな機材でも己の腕一本でピシャリと作れる職人で居たいもの。
当時四畳半のイナバ物置が工房だったため、冶具ぐらいないとお客さんにたいして説得力もでないだろうとか考えて、効率向上も含め作り上げた道具。
作りたいのは鉄のフレームだったので鉄には鉄だと、アルミ製の冶具ではなく鉄でなんとか形にしたかった。
小さな機械しか入らないクソ狭い工房の設備でよくこんなもの作ったと、当時に己に感服する。
今以上に資金に乏しかったので、自分で作るしか選択肢が無かった。
おかげで材料費だけで済んだが、その製作労力たるや半端じゃない。
本来こんな大物を削るべきではない馬力の少ない小さな機械の前でずっとマイクロゲージと向き合い、ほんとに僅かずつ時間をかけて切削していたのが懐かしい。
細部見ると集中力が途切れてしまった憎めない痕跡もあるが、大事な箇所はしっかり作れているので使用上問題なく動作してくれている。
今まで作ってきた自分の製作物の中で何が一番大変だったかというと、今現在でも良く働いてくれているこの冶具です。
自分の道具は自分で作る、作った奴にしかわからない領域がある。
なかなか自分で冶具を作るビルダーも少ないとは思うので良い経験できたと感じる。
今の技術を用いれば、この冶具よりもより良い冶具が作れるが、当時の労力以上になるのは必至。
うちのフレーム製作により適合させオリジナリティも含めた冶具製作に是非また挑みたいものだが、腰が重いというか当然仕事優先なので作っている時間など無し。
おそらく当時の暑苦しすぎる情熱には勝てません。
執念通り越して怨念じみた、諸々籠った呪物の道具です。