守るべき定石と基本はしっかり守って、崩しても良い箇所で個性を。
こんな理念で製作をしております。
一例がエンドの仕上げ方。
これがフレームビルダーが行う一般的であろう定石のエンド仕上げ方です。
ステーとエンド板の接合部を剣先状にするのがセクシー、角をしっかり立てるべし。
応力を考慮し生じる段差を最小限に、ステーのド真ん中の真っ芯に剣先の先端をしっかり狙って美しく仕立てる。
対して当工房特有の仕上げ方というのがあります。
ただ作れるからカスタムビルダーをやっているわけでなく、自分の思う自転車を作りたい。
良く見るフレームと同じ仕様ばかりなら当工房の存在価値などありません。
使用しているステーとエンドはほぼ同様のものですが、香る雰囲気は少々異なります。
曲面と平面の両立を考え、ロウを少々盛る。
ステーとエンドが一繋ぎにあるかのように円やかに仕上げます。
フィレット研磨が必須となるのでがっつり手間かかります。
当工房は修理もかなり多く行っていますが、エンドとステーの接合部の段差がきっかけでクラックが入ったフレームも修理事例がありました。
そこから勉強させてもらった応力集中の軽減も考えた仕様です。
ステーから続くラインを美しく繋げ、光沢の屈折が無いように仕上げるのが一苦労。
双方ともにRew10のフレームですが、特にご要望がない場合はうちの個性を大事にして基本的に円やか仕上げになります。
Rew10の製作は目立ってわかりやすいような個性より、こういった一見目立たずもジワジワとくる仕様を盛り込んでいるつもりです。
反対側はベルトドライブ対応だったりする。
ベルト仕様の通常はシートステー中腹に分割部を持ってくることが多いですが、シンプルな造形を好むので分割部が少しでも目立たぬようエンド付近に持って行きたい。
面倒でしたがこんな一心でオリジナル部材を手作業で作り込んでます。
強度も必要、しっかりタフに作りました。
ガタなくきつ過ぎずで仕上げるのがなかなか大変。
自分の愛車でも同様の仕様を取り入れ、通勤での実使用2年近く試験済み。
珍しい仕様でもしっかり試作を試していれば怖くない、ただ形にするではなく責任ある製作を追求するために欠かせぬプロセスであります。
さりげなくシンプルに凝る。
今回のはRew10の製作の作り込みの中で一部に過ぎませんが、道具感香る自転車を色々と追求しております。