競輪フレーム&フォークへのブレーキ穴あけ。

 

 

 

 

 

中古競輪ピストへブレーキ穴を開けて欲しいのですが...。

 

うちで多く頂戴しているカスタムのお問い合わせです。

 

 

 

 

フォーククラウンやシートステーブリッジに穴だけあければ簡単に済む、とお考えの方が非常に多いです。

確かにただ穴あけるだけで済むなら簡単です。

しかし実際のところ、これが一筋縄でいかないカスタムになります。

 

 

説明無しに安請け合いして加工後に問題があるのも考え物で、お受けした以上は責任持ちたいので、毎回説明しています。

特性を強くご理解いただいた方のみに施工をさせていただいております。

 

いつも説明するのも大変だし過大請求みたいに思われるのも嫌なので、写真も撮れたしここで説明を記載しておきます。

 

 

 

まず、NJS等の競輪ピストのフォークはブレーキを付けるための設計はされておりません、当然です。

フォーク肩下寸法がロードバイクのフォークよりも短く出来ているものがほとんど。

ピストとロードでは同じ700c対応でも基本寸法がまるで違います。

 

ただブレーキ穴を開ければ正常にブレーキを取り付けられ正常にブレーキが動作するか、という事ではないのです。

短い肩下寸法ゆえ、簡単ではないです。

ロードのブレーキはロードバイクの肩下寸法でないとうまく動作しません。 

そもそもピストフォークにブレーキを取り付ける自体にかなり無理がある。と言えます。

 

 

 

 

 

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有難く諸々のご理解ありきで施工させていただいたお客様のサンプル写真です。

 

 

お持ち込み時につけていたタイヤ太さが28c、ブレーキを付けていない状態ではクラウンとのクリアランスが確保出来きるのですが、ブレーキつけるとがっつり干渉、ホイールが回りません。

打開策として23cのタイヤをご注文いただき取り付けました。

上の写真は23c装着時、写真だと影の関係か当たっているようにも見えますが、ギリギリの隙間があります。

この辺の車種はクリアランスがタイトだと恰好良かったりもしますが、モノには節度というものがあり、本来もう少し離したいところ。

個人的にこの取付法が納まり良いかというと、タイトすぎて納まり良さに欠けると思えます。

 

 

少しでもブレーキが上に来るように極力クラウンの上側に穴を開けていますが、それでもこれです。

本体裏側の固定ボルトの枕頭取付ナット端部の径が10㎜なので、枕頭ナットとヘッド下玉押しが当たらない位置に寄せて限界です。

 

ブレーキを上に持っていきたいのはブレーキとタイヤのクリアランスを確保するだけではありません。

肩下の短さゆえにブレーキキャリパーのブレーキシュー調整穴上限を越えるものも多いです。

調整穴の一番上にブレーキシュー位置を設定してもまだ足りないことも多数あり、ブレーキ本体を削ったりしないといけないこともあります。

 

 

タイヤ銘柄によって太さ個体差がありますし、取り付けるブレーキとの相性で干渉したりもします。

ロードのフォークはブレーキを動作させるに丁度良い寸法取りの都合があり、肩下寸法が規格として概ね決まってますが、ブレーキ寸法に左右されないピストのフォークは個体差があるのを目の当たりにしており、現物がないと把握しきれません。

攻めた仕様のフォークは、フォーククラウンが削り込まれたものなども存在しており、ブレーキ穴を開ける余地など全くないものもあります。

当然ながら世界すべてのパーツ詳細を把握しているわけではありませんので、現物合わせで組み付け及び検査をしながらでないと確実な事が全く申し上げられません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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先ほど極力クラウンの上側に穴を開けていると申しましたが、それによりブレーキキャリパー固定部根本とヘッド下玉押しが干渉します。

写真はその干渉を防ぐために特殊製作した真鍮ワッシャーを削り出して取り付けています。

下玉に当たらないように上面に少しエグリを入れ、ブレーキ根本と下玉が干渉しない位置までの長さでワッシャーを作ります。

 

こういった作り込みをしないと下玉とブレーキが干渉し、締め付け不良やヘッド動作不良を起こします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ついでにシートステーのブレーキ関連に関しても説明しておきましょう。

リアのブレーキ設置も同じくお問い合わせが多いですが、こちらも穴あけだけで済むとお考えの方が多いです。

 

ブレーキ穴のないブリッジは大半が通常の丸いパイプです。

これに穴をただ開けて取り付けようとしても、うまいことはいきません。

 

ネジ類はなんでもそうですが、トルクがかかり平面にぴったりと面が合わさることによって確実な固定ができます。

パイプ形状のままですと、ブレーキ根本平面部が点でしか当たらずしっかりとした固定ができません。

しかも中空のパイプですので、トルクをかけるとパイプがつぶれます。

ブレーキのトルクにしっかり耐えるにはある程度塊状であるか、トルクのかかる縦方向にも補強のパイプを仕込みつつ平面部を設置せねばなりません。

 

表裏共に6㎜径穴でパイプ外径アールにぴったり合う半月エグリの入ったワッシャーを表裏に取り付けて六角ナット等で固定すれば穴あけだけでも大丈夫ですが、現在主流で出回っているブレーキは表側6㎜、裏8㎜の段付穴の枕頭ナット式ばかりです。

現行のブレーキを納まり良く取り付けるなら、穴あけではなく上の写真のようにブリッジ差し替えが効果的です。

 

差し替えなら比較的位置設定がしやすいので、フォークのようなクリアランスなどに悩まされることは少ないです。

 

差し替えには当然火を用いるので、塗装は焼けます。

カスタム痕跡を残しクリア塗装でもかまいませんが、綺麗に戻すなら再塗装必須です。

 

 

 

 

 

 

 

競輪フレームはバンクで戦うために設計されたものであり、市街地使用には向いていない点も多々あります。

ブレーキを入れるとかなり細いタイヤしか入りませんし、チューブも薄かったり諸々攻撃的すぎるものが多いです。

 

 

 

 

穴あけだけで済むなら確かに楽な作業です。

しかし目的は穴を開けることではなく、ブレーキを適正の位置に取り付け正常に動作させることにあります。

設計相性に無理があるので、REW10としてはフォーク自体を市販品等のロードフォークへの差し替えをおすすめします。

フォークが長くなる分ヘッド角度が寝たりホリゾンタルが微スローピングになったり、少しジオメトリーが狂ってしまいますが、元々の設計が異なるためこれも致し方ないです。

ピストは元々立ち気味のヘッド角度が多いので、少し寝る分には街乗りならそんなに悪い変化ではないかと思います。

どこかで帳尻合わせは必要になります。

 

現物組み付けや検査をしつつ特殊製作なども入ってくるので、しっかり施工しようとすると何千円で済むようなカスタムではなくなります。

すべて今回のような内容が該当するわけではなく、運よくすんなり済む場合もあればもっと大層な加工になったり取付不可の場合もあります。 

 

説明しても適当にあけてくれればいいから~なんてたまに言われたりもしますが、適当な仕事などできません。

適当でいいと言いつつも、いざ動作がうまくいかないと何かとトラブルの種になりがちで、安い工賃でお互いにリスクを負うべきでないと思います。 

 

なんでも快くお受けしたいところですが、当工房はご依頼を受けるからには責任持って行いたいです。

でも致し方ない設計上の都合がどうしてもついて回ります。

避けられない事情をしっかり説明し起こり得る症状を納得ご理解いただいた場合のみお受けします。

少々無理あるカスタムゆえにご理解のほどをお願い致します。 

 

 

自分は魔法のようなものを使えるわけではなく、カスタムはなんでも一筋縄で済むわけでないのです。

 

本来ブレーキを付けぬよう設計された自転車にブレーキ付けようとしている時点で純度は薄まります。

ブレーキ付けて純度が薄まるのなら、街乗りなら僅かのジオメトリー変化を犠牲にしても、すんなりブレーキが取り付けられるロードフォークへの差し替えが良いでしょう。

それか挟み込むブレーキプレートやアダプターなどで我慢するかです。

 

少々の無理を承知の上でどうしても付いているフォークが使いたいという方は、穴あけのお問い合わせをください。

熱意と特性のご理解あればお受けします。 

 

 

 

 

 

 

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