年月。

 

 

 

 

 

 

 

 

昔作ったフレームを見ると思い返す事もあったり、当時の思いがなんとなく感じ取れる。

 

 

 

工房立ち上げて1年ほどだろうか、その時にご依頼を頂戴したフレームが作業依頼で工房へ帰ってきた。

いわば我が子との対面、懐かしい。

 

 

 

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うちのフレームには一台も欠かすことなく刻んでいる銘切という刻印がある。

今とは刻む位置も内容も筆跡も違うが、平成21年製というのがわかる。

 

当時から現在に至るまでずっとメッセンジャーを生業としているこのユーザーさん。

日々のデリバリー業務で酷使しても長く乗れていて安心。

過去の技術でもこれだけ使って長く乗れるものを作れた、今ならもう少し向上しているはずと少し自信が持てる。

 

 

 

 

 

おおまかな仕様は一台一台ほぼすべて憶えているが、流石にごく細かいところまではどう作ったかは記憶にない。

参考がてら少し観察。

 

細部や個性の出し方は今と方向性が異なるが芯は変わっていない印象。

 

 

 

 

 

そういえばたしか語った事がないが、創業当時からラグレスのBB付近接合部は少し定石と違う仕様にしていた。

今は自然にやっていることになったので、昔のフレームを見て思い出すように気付く。

 

 

細かいですが、この際少し説明してみましょう。

 

 

 

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通常の自転車フレームのBBまわりの作りは、BBパイプ(ラグドも)の中心に向かってシート・ダウンチューブ及びチェーンステーの中心線をとるようになっています。

わかりにくいかもしれませんが、上記写真の通りです。

各パイプの中心線がBB中心と交差します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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これはうちのラグレス。

 

シートチューブはシート角を出すためにも中心線を交差させてますが、BB中心線からダウンチューブ及びチェーンステーの中心線を下方向に少しずらしています。

 

ペダリングの際にかかる力は下方向へいくのが強いので、下から包み込むように各パイプでしっかり支える作りです。

BBパイプとダウンチューブ&チェーンステーの下側ツラ位置をぴったり合わせライン取りも綺麗にあがります。

 

 

ラグフレームだとBBラグの挿入位置に依存してしまうことになるのでこういった工作ができませんが、ラグレスは自由度が高いのを生かしています。

うちのラグフレームはBBだけラグレスなんてのも多かったりします。

 

 

自転車作りは人力を効率よくさせるため、ごく細やかな工作の積み重ねが大事です。

フレーム製作の定石を知って、何故それが定石であるか探ってみた結果に変えても良い事もあります。

そんな考えでこういった工作を重ねて日々製作しています。

 

REW10フレームのラグレスBBはこうなっているのがほぼすべてだと思いますので、ユーザーさんも気にしてみると面白いかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今回なぜに作業依頼が入ったかと申すと、固着です。

 

 

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今回はシートポストが折れ、それからさらに固着が判明した模様。

なんとか助けてとの依頼。

 

他の修繕などなんでもそうですが、固着は特に実際に作業してみないと固着具合が把握しにくいです。

事前に確定見積もりを立てにくく、恐縮ながらかかった手間分の工賃となります。

 

 

炙ってしまえば幾分楽ですが、勿論塗装が剥離してしまいます。

最悪そうなっても良いとご理解いただいたが、古くからうちを支えてくれたユーザーさん、なんとか応えたい。

 

 

折れるぐらいなので幸い比較的肉厚の薄いポストだったので、リーマーで少しずつ削り落とすことに。

これがなかなかの力仕事でなかなか骨が折れる。

 

 

 

 

 

0.05㎜~0.1㎜ずつぐらい少しずつ何度も削って外れた際の達成感は一入。

 

 

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錆などで荒れていたので内径を極力変えない程度に綺麗に内径研磨。

検査用のポストを挿し、スルスル過ぎずちょうど良い感触になりました。

 

 

固着は事故ではなく、油分切れなどが原因で人為的に起こる症状です。

通常ですと1~2年に一度程度で十分なので、ポストを抜いてフレーム内部及びポストを綺麗にしてグリスアップを是非してあげてください。

怠ると固着する可能性もあがり大変ですよ。

 

あと折れた原因ですが、やはり軽量ポストであったというのが一番考えられます。

クロモリフレームはクランプネジが直接ついているものが多く、締結力が一点に集中しがちです。

肉薄なものやカーボンポストなどですと閉めこむ際に変形も生じやすくそこに応力もかかります。

耐久性などを考えると日東さんのS65などのしっかり肉厚があるものなどが非常に相性が良いです。

 

 

 

 

 

 

 

しかしこうして見ていると、傷だらけになったフレームはなんとも良い。

展示だけに生まれたような一度も乗られたことがない自転車は、自転車のようで自転車ではないように思えます。

 

使い込まれたという事はずっと愛されてきたということでもあります。

人が使うことによって自転車という乗り物には命が宿ります。

 

道具としての自転車、探究心が止みません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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