現役メッセンジャーのマッサのフレーム、ながらく持ちこたえていたものの折れました。
2014年3月に完成したフレーム。
完成して数か月後に早くも一度前からぶつかってしまい、その時の衝撃でダウンチューブ根本に少し膨らみの変形が。
とりあえず様子見という事になり、そこから現在に至るまで2年ほど過酷なメッセンジャー業務に耐えてきた。
この男は自転車の扱いが少々粗く、メッセンジャーの中でもフレームはかなりキズだらけ。
ダメージがありながら、この男の酷なデリバリー業務にしぶとくもよく持ってくれたと思います。
ぶつかって出来た変形部分に応力がかかった破損事例です。
うちのフレームは耐久性を高く作っておりますので、この変形がなければ当然もっともっと長く乗れております。
自転車という乗り物は、ペダリングの負荷や通常走行での路面からの衝撃にはめっぽう強く出来ていますが、通常走行でかからない衝撃には脆さもある乗り物です。
事故や激しい転倒などに耐え得るフレームはなく、仮に極厚パイプや無垢の丸棒で構造されていたとしても激しくぶつかれば反ります。
作り手として溶接部分が割れた事例でなくて良かった。
数多の修理もやってきましたがわかっておりますが、大凡はパイプが耐え切れずダメージが出てますので溶接部分は割れることは少ないです。
溶接部分が割れたら少し負けた気分ですね。
勿論今回もこれでご臨終ではなく、しっかり自転車として甦らせます。
無骨でも直れば良いという事で相談した結果、コストも考えガセット補強修繕にしました。
直し跡がガッツリ残りますが、うちのお客様はこの痕跡を好む方が多いです。
このフレームはダウンチューブをうちで部分扁平させた仕様になってますが、それに適合させたガセットを製作して付けています。
ただ付けるわけでなく、クラックが広がりにくくなるように整形してから、ガセットとチューブの間にしっかりロウ材を流し込みつつ接合します。
内部に流し込めるのはロウ付けという接合法の良い性質でもあるので、ガセットとパイプ全体をしっかり密着させてから外周にも溶接を盛る。
この工程によってガセット部分がクロモリ→真鍮→クロモリという積層構造箇所になります。
接合部分の末端は、応力が分散するように滑らかで段差なく仕上げ。
この部分はきっと元の状態よりはるかに強靭になった事でしょう。
少し荒めの仕上げで修繕を終え、焦げ跡は残ったままで良いとの事だったので、簡易クリア塗装をしてフィニッシュ。
これで今回はまだまだ乗れます。
こういった少し無骨な直しは、差し替えよりもコストが抑えられます。
リーズナブルにお直ししたい方にはおすすめです。
何事も無かったかのような見た目にしたい方は差し替えとなります。
修理やレストアなど全般すべてに言える事ですが、破損の補修部分が強くなってもその他すべての箇所を新品時に戻せるわけではありません。
その辺はご理解の上で修理はお考えください。
新車のような性質になる、なんでも直る、なんでも出来る、ではないです。
綺麗にして再塗装などすれば見た目だけなら新車同様にも出来ますが、根本の経年劣化などをすべて消し去れるものではないです。
ご相談時に見させていただき、詳しい説明と案内など致します。
少しリスクのある事を出来ないと返答して避ける事は簡単ですが、うちのような工房が出来ないとそのお客様は何処に行けば良いのかと考えると、どうにかしてあげたくなるのが人情ってものです。
ご理解さえいただければ、出来得るベストは尽くさせていただきます。
修理や改造のご依頼も、製作同様に随時お受けしております。
わからない事も多いかと思います、修理に関しては状態の把握などこちらも現物見させていただかないと詳しく判別できないので、当然相談だけで終わっても良いです。
何かある方はご遠慮なくご相談を。
お問い合わせいただけるのは嬉しいので、どうぞなんなりとお問い合わせください。