いつも大変お世話になっている知人より賜った秘蔵の機材たち。
今はやるべき事が多すぎてとりあえず搬入だけしかできていないので、稼働はまだ先。
冶具、旋盤、横フライス、定盤が新規導入。
こうして新しい機材と今まで使っていた旧機材を並べて見てみると、これまでの道のりを思い返します。
旧機材はプロが使うにはちょいと小さくポンコツな機材、よく今まで切り抜けてきたなぁ...と。
今まで使ってきた旧機材は昔の工房で使っていたままを移動したもの。
今の世田谷工房に合わせたものでなく、旧工房の性質で選んだものです。
モノは長く大事に使いたいので、工房が変わっても使えるし買い替えるのも忍びなくだましだまし使ってきました。
恥ずかしながら創業した昔の工房は約4畳半イナバ物置でして、狭いし色々と難ありすぎな場所でした。
百人乗っても大丈夫などと言われていた物置ですが、さすがに工場の重量物をのせると底が抜けてしまう恐れがあったので、機材全体を軽量化する必要がありました。
床全体にコンクリうつほど資金もありませんでした。
選ぶ基準は、工作機械は小さめで軽い卓上機のみ、定盤は少し薄めだけど固い性質で平面加工された精度良い鉄板、などなど。
工場の機材だけどどっしり強いものでなく軽量化しなければならないという、普通ならば考えもしない選び方をした旧機材。
旧機械は小さく軽いゆえに剛性もパワーも乏しい、お世辞にも使いやすいものではありませんでした。
変に追い込むと刃物がぶれて作業性が悪かったり、パワーもないので無理に押し込もうとするとモーターが止まったりします。
大径は先っぽしかチャックに入らないので、工夫しながらより慎重な作業を余儀なくされることも多々。
小さなポンコツを使い続けてきたおかげで変な技術も身に付いたかと思います。
小型機で凌いできた経験を生かしパワーも剛性も段違いな大きな機械扱えば、作業性が一気に上がりそうです。
懐浅くて工夫していた作業も一気にできます。
フレーム作りに使う冶具も軽量化する必要がありました。
アルミの冶具などを買ったり作ったりすれば軽量化もできて話も早い。
しかし創業当時はやはり資金もなかったですし、鉄のフレームは鉄の冶具で作りたいという頑固な鉄の思いがあり、買うに至らず。
ならばと、旧鉄冶具は一念発起してすべてこの我が手で製作しました。
今もですが創業当時はさらに輪をかけて貧乏、おかげで材料費だけで済みます。
しかしこの後が手間の地獄。
初期はお客様が全くいなかったので時間はあった。
根性も今よりかなり滾っており、有り余っていた時間と根性で鉄冶具を完成させました。
よく見ると荒いところもある冶具ですが、精度出すのも普通に使えてきたので、よく作ったなと我ながらに思います。
パワーのないポンコツ小型機械では、Tスロットやアリ溝など一つ削るのもとてつもない時間を要して大変だった。
新しく入った冶具は日本のビルダーさんにはお馴染みの一級品。
ベースが自転車フレームのシルエットになっていながら定盤と同じく分厚い鋳物で出来ている堅牢な作り。
こんな大物の鋳型を作るだけでも本当に大変だったかと思います、ベース以外の作り込みも素晴らしい。
さすがにやろうとも思えない領域です。
この素晴らしい冶具、先人の作り込みに深い畏敬の念を感じます。
この冶具をベースにして細部を現代仕様にカスタムしていこうかと思っています。
今回の新しい冶具よりもはるかに不出来なものですが一度は冶具の全体製作を経験しているので、少しは上がった技術を総動員してじっくり作り直していこうと思ってます。
今度の機材は知人の有難いご厚意と、尊敬する先人の作り込みがこもった機材。
感謝と尊敬を忘れず、人に支えられている事を心に刻みつつ、この機材を一生使うつもりで手を入れて直しながら付き合っていきたい。
今後永く付き合っていくので今後の細部アップデートもやり易くカスタムしていくつもりです。
モノを大事に使っていく上で、使いやすい事や用途に合っているだけでなく、人の思いがこもっているというのはとても大事。
こういった有難い過程があるとより永く使いたいですし、使い続ける使命感も感じます。
普通に業者からただ購入するのとは存在意義がまるで違います。
雑多に扱えば恩人も先人も悲しむことでしょう、手塩にかけて大事に使いたい。
おかげさまでREW10WORKSは現在大変忙しく、業務を止めての機材作りができません。
適当には済ませたくはなく、時間も手間も惜しまず作り込んでいくつもりです。
ゆっくりじっくり焦らずの進行です。
実稼働まではとりあえず今ままでの機材も並行して使い、業務をおろそかにしないようにします。
昨年の店舗開店で終わらず、工房もより進化していきます。
新機材の稼働でより一層の品質向上を目指します。