以前にREW10で自転車を作らせていただいたお客様がご自身のパン屋さんをオープンされました。
ご自身の作るパンにも独自の作り込みをされる方で、モノへの探求も強い方。
開店を前にお店で使うコイントレーを作って欲しいというご相談を受けました。
大変光栄な事に自分の感性を信じていただき、こちらへデザイン丸投げのミッションです。
光栄な反面プレッシャーもかかります。
コイントレーは今まで作った事ないし、普通に考えるとよく見るようなものになってしまいます。
そして自分はシンプルなものが好みなので、お任せで丸投げされると基本的にシンプルな造詣になります。
コイントレーはもともとシンプル、そんでもって自分はシンプル好き。
つまり個性が極めて出しにくいという事。
普通のもので良しとするならば自分に相談などお考えにならないはず。
なんとかお応えしたい、なかなか悩みました。
確実に出来る気がしなかったのでちょっとズルいのですが、『思いつかなかったらごめんなさい、その時は市販品のカスタムなりその他方法で考えましょう。』と、逃げ道を作らせてもらいはしました。
ご依頼いただいてから開店されるまで少し時間あったので、業務を進めながら色々と頭の中で模索し続けました。
まあそんな簡単に思いつきません...
そもそもトレーでシンプルかつ個性的なものなど見た事も聞いた事もなく、イメージもしにくい。
彫刻の彫りなどデザイン入れるのはうちの味でない。
逃げ道はいただいたものの、逃げてしまうのは悔しい。
未知の領域のモノを作る時に自分がよくやる、なんとなくでも使えそうな材料素材を揃えてみる事から始めました。
REW10へご依頼いただけるという事はREW10がよくやっている手法や素材使いを好んで下さっているという事。
わざとらしいデザインなく、無骨で、重厚で、シンプルで、素材のまま。
互いに求めるイメージを単純に言葉するとしたらこんなところ。
厚物から薄物までトレーに使えそうな板材やその他いろいろ揃えてみました。
なんとなく手に取ったのは3㎜厚の真鍮板。
とりあえずトレーっぽく端でも曲げてみるか、と曲げ終わった刹那、閃いちゃいました。
それが降りてきたのは、その時作らせていただいていたバングルの端材とコールテン鋼の丸棒が近くに転がっていたのを見た瞬間。
スイッチ入ったので、忘れぬうちに一気に形にしたのがこのトレー。
実にREW10らしいトレーになったと思える納得の出来栄え。
デザイン的なところは無いようで個性があり、シンプル、重厚、無骨、素材そのまま。
コイントレーという道具としても十分使えるというのも勿論大事。
無駄なぐらいの超高耐久性を誇り、経年変化すればもっと良くなるという使い込む楽しさがあるもの。
飽きずに使うにはこれらすべての導入が肝要。
即座にREW10SHOPでも使いたい。と思いましたが、この材料は一つ分しかとってないし他に様にした材料で肉厚変えるとバランスも悪くなります。
自分用を作るよりお客様のを優先、また次回の機会に作ります。
このトレーは是非とも手元に欲しい。
本体は分厚い3㎜真鍮無垢板。
両サイドには少し焼き色付けたステンレスフラットバー。
ステンレスと真鍮を止めるのはコールテン丸棒。
接合に使うのはステンレストルクスボルトに真鍮ワッシャー。
デザインもさほどクドさなくシンプルにまとまりました。
店名のetecoさんの名を刻む箇所は色も朽ちないよう、洋白板にして色調と照りが保てるように工夫しました。
廃れる事無く鈍くも輝いて欲しい願掛けです。
ハンドメイドらしく銅リベットを槌目付けつつしっかりとかしめる。
真鍮、ステンレス、コールテン鋼、洋白、銅、色々な金属を楽しめます。
REW10のロゴもよく見ると見える程度に打刻。
お客様にもしっかり気に入っていただけました。
昨日掲載したご結婚記念とはまた異なる喜びを感じれたトレーでした。
また一つREW10の産物が使われる場面が増え、本当に光栄であります。
遅ればせながら本日開店祝いを渡すため、お邪魔してきました。
本日はetecoさん定休日ですのでパンは買えませんでしたが、ゆっくりお話し聞ける事が出来て楽しかったです。
この方は長くパン作りを学ばれてきた方で、性格も真面目で作るモノとの向き合い方も本気です。
でも入れ込み過ぎず程よくリラックスもされた良い御人。
渡したお祝いもうちらしいやり方でこんなモノを贈らせてもらいました。
トレーを納品する際に自転車整備がてらお越しいただいたのですが、当店に鎮座していたパキポディウムを凝視なさって興味津々に話もしてくれたので、パキポディウムを植えたPOTALの鉢植えを進呈しました。
パキポディウムの異様な樹形の現物を目の当たりにすると何故だか引き込まれるものがありますが、この人もその一人です。
この方はコールテン鋼と真鍮が入った愛車に普段乗られているので、それと揃えてます。
好みに合った鉢に育てやすい品種をセレクトし植えました。
少々興味お持ちだったので渡した際は相当な気に入り様でしたので、この御人の性格もありきならばきっと大事に育ててくれそうです。
園芸に興味少なそうな方にはキーフックに名前入れて贈ったり、こちらのエゴでなく変に重荷にならないように気を付けつつ、本当に喜んでもらえるためにどうしたらよいか自分なりに工夫してます。
この辺の見極めはオーダー製作の汲み取りにも非常に大事なところです。
こちらの個性もありつつも喜んで下さるようなところを見通すのは、楽しいですしやり甲斐を感じます。
お酒やお花だけになってしまいがちのお祝い、違った形式でも個人同士の付き合いで喜んでいただけるならば良いと思っています。
お祝いの形式じみたお札よりうちはこれ。
銅無垢板に打刻&銘切。
普通なら粗相に当たるのかもしれないけど、うちの事好んでくださっている方ならばこっちの方が喜んでもらえるでしょう。
細かいところも大事なのは気持ちです。
世田谷区代沢2丁目の池ノ上駅近くのetecoBREADさん。
開店おめでとうございます。
この記事ご覧の皆様も何かの折に是非行ってみてください。