ハンドメイドフレームはある程度自転車を乗り込んで知識を付けてからビルダーに相談するのが普通。
ハンドメイドフレームは細部まで高級パーツで組み上げるのが普通。
周囲でよく聞く言葉です。
今回の一台はその普通と思われる事とは異なる過程で進めた一台です。
この自転車のオーナー様はまともにスポーツ自転車を所有するのがはじめてというお客様。
モノが凄く好きなのが伝わってくる熱い方で、当工房の産物に深く共感くださりオーダーへと踏み切られました。
当工房にとってはお客様の知識や経験の有無は全く気にするところではなく、如何なるお客様が来られてもしっかり具現化するのが自分の仕事。
知識は無くとも漠然としたお求めの格好良さやどう乗っていきたいかはお伝えいただける。
情報はそれで充分、設計や見え方などの難しい事はプロであるこちらがしっかり考え提案するのが良いと思います。
ご要望に基づいた提案、それが誂えでもあり、お互いのらしさが出るREW10のモノ作り。
パーツ選定はほぼお任せくださったので抽象的でもご要望を伺い提案させてもらいました。
ハンドメイドフレームはアメリカなどの高級パーツを多くに鏤めて組み上げる事が昨今の主流かもしれないが、リーズナブルで気の利いたパーツを駆使して組むのも非常に良い。
自分はお任せいただいたら高級パーツで固める事はしない事が多く、抜きどころをたくさん作ります。
そのまま永く乗ってもらっても良いし、カスタムベースとしてお使いいただいても良い。
高級品は耐久性などが高いとされていて良いのは当然ですが、リーズナブルなパーツがすべて耐久性が低いという事ではありません。
逆に低コストで品質の良いものを作るのは限られたメーカーさんしかできない難しさがあると思います。
個性が控えめになってしまうリーズナブルなパーツたちを用い、パーツ単体個々で主張するものでなく全体が馴染むようにトータルとしての個性を高める組み方をするのなんかは実に楽しいものです。
パーツが主役にならずフレームを引き立て、組み方の創意工夫でリーズナブルなパーツたちの個性をより良いものへ昇華させる、こんな事が出来たら面白い。
それがシンプルで理に叶ったものであれば飽きにくい性質が勝手についてまわります。
長年ユーザー様と共に出来る自転車はどんなものか。
自転車は飾り物でなく乗り物、人が移動で使う道具という事を永く全うしてこそ美しい。
小手先の造形や技術比べみたいなモノ作りはもうしたくない。
普通に見えてそうでない、そんな自転車、そんな道具。
毎回本当に良い自転車を組ませていただき、我が探求心は尽きません。