フレームビルダーのイメージというのは、トーチで火を吹いている印象をお持ちの方が多いと思います。
しかしながら、かかる時間で言うと火を吹く作業はそんなに長くない。
設計から下処理含めた仮付けまでの作業にはとめどない神経を要し、本溶接後は根気勝負の作業になります。
ヤスリやペーパーを使う根気を使う時間がはるかに長いが、気疲れするのは神経使う仕事です。
ろう付けによる接合を主体とするREW10、仕上げ研磨が多くを占めます。
ほぼ研磨工と言っていいぐらいの作業時間です。
仕上げ研磨は何年経とうと真の終わりというものが見えません。
常日頃、いただく製作工賃分以上の手間はかけております。
時間と手間度外視で己の全身全霊をかけた研磨をしているかというと、そこまでは申し訳ないですが出来ておりません。
REW10もプロの端くれですから、工房運営の事を考えるとかけても良い時間に制限があります。
時間無制限のアマチュアや、気の済むまで労力を費した作品を作るアーティストではないです。
いただく工賃を時間換算し少し超過したぐらいは頑張ってますが、商品として納得いくレベルまできたら終わりとさせていただいてます。
もう長く全身全霊の本気を出した事がないです。
コスト採算度外視でいくらでも払うのでやってくれと言われれば本気も出せますが、今の工賃でそれをすると手間がかかりすぎて運営できなくなります。
全霊の本気を出した時に今の自分自身がどこまで出来るか、自分自身がわかっていないです。
大した事ないかもしれないし、意外にもかなり綺麗なものが出来上がるかもしれません。
綺麗な仕上げは良いもの、というのが当たり前の考えとしてあると思います。
REW10が目指すべきは、誰よりも何処よりも美麗な仕上げというものではなく、道具としての仕立ての良い範囲の仕上げ。
工芸品や美術的な美しさでなく、人が普段使って自転車という道具として乗る上での良い塩梅な仕立ての良さ。
綺麗すぎると扱いも丁寧になり過ぎて、求める自転車像とは異なってきます。
作業で着ているワークウエアやブーツがビスポークのような作りだと違和感を感じます。
それと同じように超々美麗で繊細すぎる仕上げの商品より、シンプルで、さりげなくて、地味に凝っていて、なんとなく佇まいが良いものが大好物なんです。
妥協をしているという事でなく、コスト内で納得できる道具としての仕上がりを追求してます。
言い訳みたいに聞こえない事を願いますが、REW10のフレームはそこに近づけるように頑張っています。
写真のフレームは営業時間外にこっそりじっくり進めていた、娘のロードと自分の新車です。
普段と同じ品質で、時間外ゆえ長めの期間をかけて少しずつ進めました。
今乗っている愛車が2013年製作、それ以来もう8年も新作サンプルも愛車も仕上げずにいました。
最近のパーツ事情が以前と大きく変わってきており、お客様のおかげで新たなものにも触れられ理解も出来てきたのですが、自分でも乗って楽しみながらより深め、作りなども学びたいと思っておりました。
触る作るだけでなく、乗って使って確かめて感じるのは作り手において大事な事です。
知ったかぶりするよりマシなので申しますが、新しいものは正直疎い自分です。
自転車は新旧問わず好きなのは変わらないし、お客様のものを作らせていただく上でもっと知っておきたい。
そんな最中、中学2年の娘から興味津々にしつこくロードバイクに乗りたいと言われ、でも一緒に乗ってあげられるようなスポーツ車持ってないなと。
お客様の自転車がどんどん出来上がっていき格好良いものが多く触発され、自分が使っていない新しいものへの物欲と新たな興味が沸々と。
お客様から今回思う自転車にバッチリ良さそうなフォークやパーツを下取り的に交換入手。
こうして、色々なきっかけが決定打となり、娘の自転車と同時に7~8年ぶりのサンプル兼新車の製作着手となりました。
長らくスポーツ的自転車を所有してなかったので、最新のパーツたちがどのような使い勝手か、どんな進化がされているか、ワクワクしています。
新たな自分の愛車は新しめの規格やパーツを用い、どこにでも行けそうなグラベルにしてます。
街乗りのみに特化した耐候性鋼の愛車とは異なりスポーツ性とアドベンチャー性も考慮、今回の一台があればかなりカバーできそうです。
フレームもパーツもかなりシンプルなので、変態的構造やレアパーツ満載などはほぼないので、そういった期待はしないでください笑
自分で商いしてるとありがちな自分のは特別という考えは全くなく、お客様にお作りしているフレームのほうがかなり凝ってます。
超シンプル、まずまず普通なパーツ、REW10にお越しくださるお客様視点で今後ご要望が多そうなサンプルに適した一台です。
自分の興味本位で作った前回と違い今回は自分のためでもあり、サンプルとして人のためでもある自転車。
早く乗りたいですね。
毎回お客様はこのような心境なのだと、肌身に沁みる昨今です。
コロナ禍で足りないパーツが多いのが泣けます。
てな感じでパーツが揃わず出来上がらないという状況が来ていまいそう。
組み上がってしばらく楽しんだら紹介します。