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電気工事を終え、新機材の旋盤と横フライスがやっと使えるようになりました。
この旋盤は修行時に使っていたものと同じもの、非常に愛着があり慣れてもいるため使いやすい。
今まで使っていたポンコツの旋盤は、家庭用電源で動くしょぼい100V、 卓上機ゆえ小さくて剛性もなく機械でした。
極狭小文京イナバ物置時代の基準で選んだので致し方ない選択だった。
パワーもない剛性もないだけでなく、懐も狭く固定できる径も小さめ、使える刃物も小さいものばかり、本当に色々考えながら工夫しないと乗り越えられない場面も多々ありました。
そんなポンコツ機械を使い続けて10年、おかげで妙な技術が身に付きました。
三相動力のパワー、堅牢で重厚な鉄の塊の剛性、深い懐、多種多様の刃物が使用可、これらが前の旋盤とは比べ物にならない。
ポンコツに慣れ切った身と培った技術を持ってこの機械を使った時は感動ものでした。
いままでブレていたものが全くブレず、本当にスムーズに削れる。
基本的な切削もまるで違う。
かなり工夫しないと入らなかった径をいとも簡単に飲み込む。
前の旋盤は回転数が電子制御だったので一見聞こえは良いですが、これがなかなか難物。
負荷がかかると回転数を勝手に上げ、トルクをあげようとする機械でした。
一定の回転数を保つのに、刃物の状態、刃物の入れる方向と深さ、送りの速度、いちいちピーキーな動作を要求されました。
おかげで妙な感覚が身に付き、今ではそれもよかったのかと思えます。
今度の旋盤は古い型のものなので電子制御ではなく、ガッチリとした作りのギア変速。
もう勝手に回転数が上がる事もなくスムーズです。
工作機械は古き良き作りが好きです。
古い旋盤ですが、プロダクツとしての格好良さも抜群で本当に気に入っています。
径のデカいPOTALの植木鉢。
これを懐狭い旧旋盤で作業するのは至難でしたが、今は小径と変わらない感覚で削れます。
前の旋盤だとチャックのかかりが浅く、回すだけでも怖かったぐらい。
今までは手作業だったバングルの材料の縦切り。
ダマスカス鋼は硬度も高めで、以前のポンコツだと機械加工のほうが遅かったので全部手作業で切っていました。
硬いものは超低速高トルクで切削するのが基本で、熱を持たずに刃物も摩耗しにくいですが、旧機械だと低速域はまるでトルクがないのでモーターからのベルトが滑るか、よくモーターが止まりました。
変に追い込んでモーターが焼き付いたり、刃物をどんどん減らすのも嫌だったので、致し方なく選んでいた手作業。
機械加工でないと真っすぐに長く縦に切るのは本当に大変でした。
今はサクサクと良い音を立てつつ、綺麗で早い作業ができるようなりました。
10年経ってやっとプロが使うような機材になれたかと思います。
作業性も上がって製作の手間がいくらか効率的になりました。
クオリティも一つ段階上に上げたいところ、頑張ります。
弘法筆を選ばず。
という言葉もあり、どんな機械でも同じ仕事はしたいところ。
未熟な自分は機材の差を感じているのは実は少し悔しかったりします。
新冶具の作り込みはまだです。
以前のようにポンコツ機械で作るよりかなり楽で良い仕事が出来ると思います。
鉄冶具を自らの手で一から作った経験がありますが、今回はゼロベースからでなくベースありきで改造です。
部分改造であっても新機材使っても、やはり冶具作りというのは大変な事は想像でき、本腰据えるとしばらく業務止まって運営できなくなるので時間かけてじっくり進めようと思います。
業者から買ったものではなく、先人の魂が入り、知人の恩のこもった、由緒正しい新機材。
本当に有難いです、ずっと大事にします。
いつも大変お世話になっている知人より賜った秘蔵の機材たち。
今はやるべき事が多すぎてとりあえず搬入だけしかできていないので、稼働はまだ先。
冶具、旋盤、横フライス、定盤が新規導入。
こうして新しい機材と今まで使っていた旧機材を並べて見てみると、これまでの道のりを思い返します。
旧機材はプロが使うにはちょいと小さくポンコツな機材、よく今まで切り抜けてきたなぁ...と。
今まで使ってきた旧機材は昔の工房で使っていたままを移動したもの。
今の世田谷工房に合わせたものでなく、旧工房の性質で選んだものです。
モノは長く大事に使いたいので、工房が変わっても使えるし買い替えるのも忍びなくだましだまし使ってきました。
恥ずかしながら創業した昔の工房は約4畳半イナバ物置でして、狭いし色々と難ありすぎな場所でした。
百人乗っても大丈夫などと言われていた物置ですが、さすがに工場の重量物をのせると底が抜けてしまう恐れがあったので、機材全体を軽量化する必要がありました。
床全体にコンクリうつほど資金もありませんでした。
選ぶ基準は、工作機械は小さめで軽い卓上機のみ、定盤は少し薄めだけど固い性質で平面加工された精度良い鉄板、などなど。
工場の機材だけどどっしり強いものでなく軽量化しなければならないという、普通ならば考えもしない選び方をした旧機材。
旧機械は小さく軽いゆえに剛性もパワーも乏しい、お世辞にも使いやすいものではありませんでした。
変に追い込むと刃物がぶれて作業性が悪かったり、パワーもないので無理に押し込もうとするとモーターが止まったりします。
大径は先っぽしかチャックに入らないので、工夫しながらより慎重な作業を余儀なくされることも多々。
小さなポンコツを使い続けてきたおかげで変な技術も身に付いたかと思います。
小型機で凌いできた経験を生かしパワーも剛性も段違いな大きな機械扱えば、作業性が一気に上がりそうです。
懐浅くて工夫していた作業も一気にできます。
フレーム作りに使う冶具も軽量化する必要がありました。
アルミの冶具などを買ったり作ったりすれば軽量化もできて話も早い。
しかし創業当時はやはり資金もなかったですし、鉄のフレームは鉄の冶具で作りたいという頑固な鉄の思いがあり、買うに至らず。
ならばと、旧鉄冶具は一念発起してすべてこの我が手で製作しました。
今もですが創業当時はさらに輪をかけて貧乏、おかげで材料費だけで済みます。
しかしこの後が手間の地獄。
初期はお客様が全くいなかったので時間はあった。
根性も今よりかなり滾っており、有り余っていた時間と根性で鉄冶具を完成させました。
よく見ると荒いところもある冶具ですが、精度出すのも普通に使えてきたので、よく作ったなと我ながらに思います。
パワーのないポンコツ小型機械では、Tスロットやアリ溝など一つ削るのもとてつもない時間を要して大変だった。
新しく入った冶具は日本のビルダーさんにはお馴染みの一級品。
ベースが自転車フレームのシルエットになっていながら定盤と同じく分厚い鋳物で出来ている堅牢な作り。
こんな大物の鋳型を作るだけでも本当に大変だったかと思います、ベース以外の作り込みも素晴らしい。
さすがにやろうとも思えない領域です。
この素晴らしい冶具、先人の作り込みに深い畏敬の念を感じます。
この冶具をベースにして細部を現代仕様にカスタムしていこうかと思っています。
今回の新しい冶具よりもはるかに不出来なものですが一度は冶具の全体製作を経験しているので、少しは上がった技術を総動員してじっくり作り直していこうと思ってます。
今度の機材は知人の有難いご厚意と、尊敬する先人の作り込みがこもった機材。
感謝と尊敬を忘れず、人に支えられている事を心に刻みつつ、この機材を一生使うつもりで手を入れて直しながら付き合っていきたい。
今後永く付き合っていくので今後の細部アップデートもやり易くカスタムしていくつもりです。
モノを大事に使っていく上で、使いやすい事や用途に合っているだけでなく、人の思いがこもっているというのはとても大事。
こういった有難い過程があるとより永く使いたいですし、使い続ける使命感も感じます。
普通に業者からただ購入するのとは存在意義がまるで違います。
雑多に扱えば恩人も先人も悲しむことでしょう、手塩にかけて大事に使いたい。
おかげさまでREW10WORKSは現在大変忙しく、業務を止めての機材作りができません。
適当には済ませたくはなく、時間も手間も惜しまず作り込んでいくつもりです。
ゆっくりじっくり焦らずの進行です。
実稼働まではとりあえず今ままでの機材も並行して使い、業務をおろそかにしないようにします。
昨年の店舗開店で終わらず、工房もより進化していきます。
新機材の稼働でより一層の品質向上を目指します。
工房立ち上げて少し経ってから自作で作り上げた冶具。
とある冶具に大いなる敬意と感銘を受け製作したモノ。
当工房最初期の2~3台は冶具無しでビルドしていました。
ある程度以上技術ある職人ならば冶具が無くても同じ精度で作れると思うが、冶具無し製作はかなり作業性が悪かったのは鮮明に記憶に残っている。
多少の機材は必要だが、冶具はないと作れないということではないし、整った良い機材でないと作れないというのも寂しい。
どんな機材でも己の腕一本でピシャリと作れる職人で居たいもの。
当時四畳半のイナバ物置が工房だったため、冶具ぐらいないとお客さんにたいして説得力もでないだろうとか考えて、効率向上も含め作り上げた道具。
作りたいのは鉄のフレームだったので鉄には鉄だと、アルミ製の冶具ではなく鉄でなんとか形にしたかった。
小さな機械しか入らないクソ狭い工房の設備でよくこんなもの作ったと、当時に己に感服する。
今以上に資金に乏しかったので、自分で作るしか選択肢が無かった。
おかげで材料費だけで済んだが、その製作労力たるや半端じゃない。
本来こんな大物を削るべきではない馬力の少ない小さな機械の前でずっとマイクロゲージと向き合い、ほんとに僅かずつ時間をかけて切削していたのが懐かしい。
細部見ると集中力が途切れてしまった憎めない痕跡もあるが、大事な箇所はしっかり作れているので使用上問題なく動作してくれている。
今まで作ってきた自分の製作物の中で何が一番大変だったかというと、今現在でも良く働いてくれているこの冶具です。
自分の道具は自分で作る、作った奴にしかわからない領域がある。
なかなか自分で冶具を作るビルダーも少ないとは思うので良い経験できたと感じる。
今の技術を用いれば、この冶具よりもより良い冶具が作れるが、当時の労力以上になるのは必至。
うちのフレーム製作により適合させオリジナリティも含めた冶具製作に是非また挑みたいものだが、腰が重いというか当然仕事優先なので作っている時間など無し。
おそらく当時の暑苦しすぎる情熱には勝てません。
執念通り越して怨念じみた、諸々籠った呪物の道具です。
サブ万力がRew10のハードワークに耐えきれず壊れた。
鋳物の断面を見るとスカスカで質が悪い。
新品で買ったのに僅か一年ほど、いきなり折れる見事な破断。
やはり安物は使い物にならない。
新しい万力を新調した。
鉄工所勤めの頃に使いやすくて惚れ込んでいたORIENTALの万力。
しかもこいつはヘッドが回転してくれる優れもの。
前からずっと探していたものなのでかなり気に入っている。
細部の質やネジ類の重厚感なども前のクソバイスとは次元が違う。
幸い状態も良く、使い勝手も良い、比較的綺麗に残っているゴールド塗装もなかなか良い。
これぞ道具という無骨なルックスも自分の製作意欲を掻き立ててくれる。
良い道具を使うと兎に角気持ちが良い。
皆様が自転車パーツを物色するように、自分は工作機械や工具を日々物色するのが趣味みたいなものです。
使い勝手、質の良さ、外観も勿論大事ですが、裏側、内部、ネジ等の作り込みに痛く心を奪われる変わった野郎です。
どんなものでもブランドや薀蓄などにはほぼ興味なく、ひたすらこういったモノの見方しかしません。
このバイスも手元に来た瞬間に全バラシして、構造を理解するとともに内部の作り込みに萌え、オーバーホールを楽しみました。
粗を探すという事ではないですが、バラして内部構造を理解し必要に応じて調整するというのは永く付き合っていく上で重要な儀式です。
道具というモノに惹かれます。
どんなに手が込んでいても、見た目だけで何故そうなっているのか理解できない構造物には感動できない。
とある性能を突き詰めていった結果に勝手についてきたようなデザインにこそ、自分はリスペクトできます。
難しい製作と、手が込んだだけの製作は似て非なるものと思っています。
初期の自分の製作なんかはまさにそれで、情熱はそこそこ凄いのですが手が込んだだけのモノ。
初めたばかりの焦りからか目立つことしか考えていなかった時期、今考えれば理念も技術も浅い甘ちゃんです。
まあ、そんな時期があったからこそ今がある訳です。
工作機械、工具、ミリタリー物、ワークウエア等のような、すべて実用性から生まれてきた道具を愛しています。
これらは飾りなんてものはついていない、ひたすら実用主義。
でもそれが自分の求める最高のデザインであります。
自分の作るフレームもそんな実用主義の道具でありたいと考えています。
うちのフレームがロゴも目立たず、最近シンプルなものが多いのはこういった考えの表れなのです。